就職に向けた準備について調べると、「職業準備性」という考え方を目にすることがあります。
代表的なものが「職業準備性ピラミッド」です。
下から、
- 健康管理
- 日常生活管理
- 対人技能
- 基本的労働習慣
- 職業適性
と積み重なっていく考え方で、JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の資料などで紹介されています。
一番下の土台にある「健康管理」には、体調を整えることだけでなく、自分の障がいや病気を理解し、付き合い方を身につけていくことも含まれるとされています。
図で見ると、とてもシンプルです。
でも私たちは、
「自分の障がいを理解する」というのは、実はかなり難しいことではないか
と考えています。
病名を知っていることと、自分を理解していることは違う
例えば、診断を受けて、
「自分はADHDです」
「発達障害があります」
「うつ病の治療をしています」
と言えることと、
自分がどんなときに困りやすいのかを説明できること
は、少し違います。
同じ診断名でも、困る場面や得意なこと、疲れやすさ、働きやすい環境は人によって異なります。
だから、
「この病気だから、こういう仕事が向いている」
「この障がいだから、これは苦手」
と診断名だけから仕事を決めることはできません。
大切なのは、病名の説明を覚えることではなく、
自分の場合はどうなのか
を知っていくことです。
「自分の場合はどうなのか」は、意外と自分だけではわからない
例えば、
「仕事が続かない」
という経験があったとします。
理由を聞かれても、
「自分が怠けてしまったから」
「根性がなかったから」
「コミュニケーションが苦手だから」
くらいしか思いつかないこともあります。
でも、少し細かく振り返ってみると、
- 口頭でいくつも指示を受けると整理できなくなっていた
- 周囲が忙しそうだと質問するタイミングがわからなかった
- 午後になると集中力が大きく落ちていた
- 急な予定変更が続くと強く疲れていた
- 仕事内容そのものより、人が多い場所にいることが負担だった
といったことが見えてくるかもしれません。
逆に、
- 一人で集中する作業は長く続けられた
- 手順が決まっていると安心して進められた
- 文章で指示をもらうと理解しやすかった
- 誰かに一度確認してもらえるとミスが減った
という「できていた条件」が見つかることもあります。
こうしたことは、診断名だけを見てもわかりません。
自己理解は「苦手探し」ではない
「障がいを理解する」と聞くと、
自分のできないことを探す作業
のように感じるかもしれません。
でも、本来はそれだけではありません。
就労支援の現場で使われる「就労移行支援のためのチェックリスト」(厚生労働省)を活用した支援では、できていることを確認するとともに、難しいことや課題については「どのような配慮や支援があるとよいか」を考えていくことが大切だとされています。
つまり、
「これは苦手です」
で終わる必要はありません。
例えば、
口頭だけの指示は忘れやすい
↓
文章でも確認できれば進めやすい
あるいは、
同時に複数の仕事を頼まれると混乱する
↓
優先順位が明確なら取り組みやすい
というところまでわかれば、それは働く環境を考えるための大切な情報になります。
「できないことを知る」より、
どうすればできるのかを知る。
そこまで含めて自己理解だと、HOHOHO福井では考えています。
だから、最初から自分を説明できなくてもいい
就労支援の場では、
「あなたの得意なことは何ですか?」
「苦手なことは?」
「どんな合理的配慮が必要ですか?」
と聞かれることがあります。
でも、これにすぐ答えられないのは珍しいことではありません。
むしろ、
働いた経験が少ない段階で、自分に必要な配慮を完璧に説明する方が難しい
のではないでしょうか。
だから最初から、
「私にはこういう特性があって、こういう配慮が必要です」
と完成した答えを持ってくる必要はありません。
わからないところから、一緒に探す。
それも就労支援の役割の一つだと思います。
実際にやってみると、自分についてわかることがある
HOHOHO福井では、SNS、デザイン、資料作成、文章作成、AIなど、さまざまな作業を実際に試すことができます。
目的は、
「デザインの技術を身につけること」
だけではありません。
作業をしていると、
「これ、意外と好きだな」
「30分くらいなら集中できる」
「自由に考える仕事より、整理する仕事の方がやりやすい」
「口頭説明だけだと分からないけれど、画面を見ながらなら理解できる」
といった、自分についての小さな発見が出てきます。
その積み重ねから、
自分に合う仕事や環境の輪郭
が少しずつ見えてきます。
「理解できてから働く」のではなく、理解しながら働く準備をする
職業準備性ピラミッドを見ると、
一番下の土台を完全に完成させてから、次へ進まなければならないようにも見えます。
でも、実際にはそう単純ではありません。
JEEDの資料でも、職業準備性に絶対的な基準があるわけではなく、企業側の考え方や支援機関の活用状況などによって必要な条件は変わるため、すべての階層が揃っていることが、そのまま就職につながるというものではないと説明されています。
自己理解も同じです。
自分のことを100%理解してから就職する必要はありません。
働く準備をしながら、
「こういうときに疲れるんだな」
「こういう環境だと意外とできるんだな」
と知っていけばいい。
そして、就職したあとに新しくわかることもあります。
自己理解は、完成させるものではなく、更新していくものなのかもしれません。
「自分のことがよくわからない」から始めていい
「何が得意かわからない」
「どうして仕事が続かなかったのかわからない」
「どんな配慮が必要なのかわからない」
そういう状態でも大丈夫です。
その「わからない」を、作業したり、話したり、振り返ったりしながら、一緒に少しずつ見つけていく。
HOHOHO福井では、そこから働く準備を始めたいと考えています。
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